第7回寄稿 キルハトッテ「はじめまして、キルハトッテです」

       佐藤佐吉演劇祭2022の関連企画として開催される『見本市』

活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います
【公演詳細】
佐藤佐吉演劇祭2022 関連企画 ショーケース公演「見本市」
2022年4月7日(木)ー10日(日)@北とぴあ カナリアホール

みなさん、はじめまして。窓口担当の平井です
見本市の"カタログ"をつくるべく、インタビュー企画に続いて"団体からの寄稿"を集めました
今度は彼彼女ら自身の"言葉"に耳を澄ませてみてください✨
「見本市カタログをつくろう」第7回目の寄稿はキルハトッテさんからお寄せいただきました


 はじめまして、キルハトッテです。
 今回、旗揚げをする団体なので、多くの方は私たちを知らないと思います。なので、「おはよう」でもなく、「こんにちは」でもなく、「はじめまして」と挨拶させて頂きます。
 これから、皆様と「はじめまして」から、「こんにちは」とか「お久しぶりです」とか、また会えたことを喜ぶような挨拶ができるようになれたらなと思います。


 キルハトッテとは?
 『あるかもしれない"きっと"をコラージュする』をテーマに山本真生が劇作・演出をつとめる演劇ユニット。
人間の『形』について、食べ物などの身近なモチーフを使って問う作品が特徴。
Twitter.instgram▶︎kiruhatotte


(撮影:シモサワマリコ)

 はじめまして。キルハトッテ主宰の山本真生です。
 今回上演する『バター』はミナコという人物の十数年間をヒナという主人公の視点から見たお話です。
 戯曲を書いている時、私自身の過去をよく思い出しました。
 特に、中学生くらいの頃、身体が子供から大人へとつくり変わっていった時期のこと。あの時の感覚が強くよみがえってきました。
 その頃に読んだ、『シルバーチャイルド』というイギリスのファンタジー作家、クリフ・マクニッシュの作品があります。
 ある日突然、異常な食欲に襲われる様になったミロという少年。強烈な痛みと共に、彼の皮膚は剥がれていき、やがて、身体が金色に光り輝くようになります。そして、その変化は、地球を襲う怪物と戦うためだったことが明らかになります。
 生々しく身体がつくり変わっていくミロと自分が重なって怖くて仕方なくなり、途中で読むのをやめてしまったことを覚えています。
 私の身体は何かと戦う目的のために変わったわけでも、金色に輝くようになったわけでもない。でも、身体の成長を終えた今でも、あの頃の私が感じていた不安や怖さを想像すると、胸がキュッとなります。
 私は『食べ物』をモチーフに作品を作ることが多いのですが、私にとって食べるという行為は、あの頃からずっと、身体がつくり替えられてしまう恐怖に繋がっているのかもしれません。怖いから、知りたいと思うし、書かずにはいられないのだと思います。

 稽古を頑張っています。稽古場では、みんなで作品について話すことが多いです。わたしは、みんなの言葉で作品の解像度が上がっていく時間がとても好きです。


 俳優陣から、作品についての言葉をもらいました⤵︎⤵︎

(ヒナ役 吉沢菜央)

 この作品ではバレエ少女が出てきて、途中で身体の成長に伴って回れなくなってしまうシーンがあるのですが、そういう時期の話を稽古場でもしました。小さい頃は必要最低限の骨と筋肉と軽い身体で遊び回っていても、だんだん脂肪がついてきたり、今度は身体をコントロールする筋力が必要になってくるよねと。そういう時期は、同時に人付き合いが複雑になって、動物的な人間としての身体の成長だけじゃなく社会的な心の成長を求められて、小さい子が両方に立ち向かわなければいけないなんて、なんだか既に太々しくなり終えた私からみると大変だ!という気がしてしまいます。
 とは言っても、私の中にもまだまだ未成熟な所は沢山あって、世界を見れば遥かに歳をとった人にも沢山あるように思えて、休んだり違うことをしたり、たまに向き合って、ゆっくりやっていこうと思います。バターが溶けるくらいじゅわ〜っとゆっくりな気持ちになってもらえるよう頑張ります。


(ヨリベ役 森﨑陽)

 作品中に登場する要素たちがどれも印象強く、勝手に味覚や嗅覚、感覚とか、五感を引き出していくようなところが面白いです。また、登場人物の言葉や行動に胸が締め付けられて、今までの自分に「君はどうなんだい?」と肩をたたくように、昔を思い起こしてしまいます。稽古を重ねていくごとに「バター」の面白さを身に感じてきて、稽古中学ぶことがたくさんあります。本番では「バター」のインパクトと世界観を、お客さんに届けられるよう稽古を頑張ります。


(ミナコ役 林美月)

 この作品の稽古が始まってから、自分の過去を思い出す機会が増えました。嫌な過去は誰にでもあるもので、私自身も、この作品の登場人物たちも、過去との向き合い方を模索しながら生きているように感じます。
 稽古場で自分の経験を共有して、みんなで色んな意見を交わしながら作品に反映させていく作業は、苦しいはずなのに、どこか救いに感じたりします。それはきっと作品の雰囲気からくるもので、メッセージの強さとは裏腹に、作品の持つバターのような甘さやホットケーキのような温かさに救われています。だから、あの時の私がこの作品を見たら救いになるのかなと思います。
 この物語のメッセージが伝わるように、誰かの「救い」になれるように、精一杯頑張ります。


(撮影:シモサワマリコ)

 この作品を観終わった後、よかったら感想を頂けると嬉しいです。この時代に、劇場に集まって、同じ時間を共有できたことは、それだけで奇跡だと思うから。皆様の考えていることとか、知れたら嬉しいです。
 劇場で、お待ちしています。お会いできるのが楽しみです。


◎作品情報◎

キルハトッテ「バター」

~あらすじ~
ヒナのもとに、いなくなってしまった幼馴染ミナコがバターとなってやってくる。ヒナはミナコの知り合いらしき人物、ヨリベとともにミナコについて回想する。

~作演出~
山本真生

~出演者~
ヒナ 吉沢菜央
ミナコ 林美月
ヨリベ 森﨑陽

~参加チーム・タイムテーブル~
Cチーム
2022年4月
 8日(金)19:00
 9日(土)12:00
10日(日)15:00※
※=終演後にアフタートーク有(約20分予定)

受付は開演の30分前。開場は20分前。
上演時間は約100分予定(1団体につき約30分の上演)。

◎以上◎

※次回は明日、オドルニクからの寄稿です。次回もまたお会いしましょう!

 なお、記事の一覧はコチラよりご高覧いただけます。 

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