"Roots/vol.2"『劇団スポーツ』ーーーだからちょっと原点回帰というか、そういう演劇の力を存分に使うお芝居になると思います。

佐藤佐吉演劇祭2022、参加団体のこれまでとこれからをお伺いし、

できれば歴史をアーカイブしていくインタビュー企画"Roots"が始まっております!

(vol.1のやみ・あがりシアターさんは配信がありましたので、配信なしでインタビューのみの劇団スポーツさんが書き起こし1発目になりました!順番がずれ込んでおります!)

今回は、トップバッターの『劇団スポーツ』さんより、主宰の内田さん、俳優の竹内さんにお話を伺います!





内田倭史(うちだ・まさふみ)[写真左]
1996年2月15日生まれ。大分県出身。
法政大学入学を機に上京し大学二年時より早稲田大学演劇倶楽部に参加。
2016年、田島実紘とともに劇団スポーツを旗揚げ。構成・演出のほかに舞台美術やフライヤーなどのデザインを担当する。2018年より劇作家・演出家の谷賢一率いるDULL-COLIRED POPに参加。
主な出演作に、DULL-COLORED POP 福島三部作 第1部『1961年:夜に昇る太陽』 ウンゲツィーファ 『自ら慰めて』

竹内蓮(たけうち・れん)[写真右]
1996年3月2日生まれ。新潟県上越市出身。
千葉大学教育学部体育科選修卒業。劇団スポーツには2017年11月「略式:ハワイ」より参加。2018年3月「グランマに伝えて、アニーは不死身。」を経て正式に劇団員(俳優・プリセット確認担当)となる。
主な出演作に、劇団献身「猿ノ献身、」、feblabo「ホテルミラクル4」、河西裕介ws公演「ラブリー」など。

劇団スポーツ https://gekidansport.com/

法政大学文学部の同期である内田倭史と田島実紘により2016年に結成。
2017年より、早稲田大学演劇倶楽部を拠点として活動する。
2018年より、プリセット確認担当兼俳優として竹内蓮が加入。
ワンアイデアから無理やり構想された物語と演劇の可能性を大胆に誤解した演出、脚本を無視し舞台上で思ったことを口にする俳優たちが特徴。
“わかっちゃいるけどやめられない”をモットーに「だらしなさ」をどこまでもストイックに描く。

佐藤佐吉大演劇祭2018 in北区 にて「えんぶ賞」を受賞。
2018年度佐藤佐吉賞優秀演出賞、2021年度佐藤佐吉賞優秀作品賞を受賞。

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大石:それでは、簡単に自己紹介をお願いします!

内田:主宰をやっていて、普段はチラシを作ったりしてます。今回ははじめて一人で作演出をやることになりました。いつもは田島(※もう一人の主宰、写真中央)と二人でやってるんですけど。初挑戦です。

竹内:俳優をやってます、竹内連です。劇団スポーツでは主にプリセット確認担当をいつもやっていますね。

大石:団体紹介にも書かれてますよね。事実なんですか?(笑)

竹内:でも前回公演ぐらいからあんまりかもしれないですね。初期の頃は本当に、内田君は本番前になっちゃうとプリセット忘れちゃってたので…。他の団体に客演で出るときも結構プリセット確認担当をすることあります。でもそろそろ捨てたいですね(笑)



演劇を始めたきっかけ

内田:大学生になるまで演劇というものにあまりに馴染みがなくて。僕は中高と剣道をやっていて、一応高校に演劇部はあったっぽいんですけど、見たことがなくて…大分には小劇場もないし、子ども劇場みたいな感じでわらび座が来るのを見たり、土曜の昼に吉本新喜劇がやってたのでそれを観たり、っていうのが唯一演劇が楽しい、って感じる時間でしたね。

県外の劇団とか、そもそも小劇場、という文化自体を知らなかったです。

で大学生になって、1年生の時に学科の友達の田島くんが「演劇サークルに入る」って言ってきて、誘われて。その足でサークルの部会に行って、「コントライブがあるんだけど出ますか?」って聞かれて、「出ます」って言って(笑) その時田島くんが書いたコントに僕が出て、小さい空間で場所で演劇やるって言うのに触れたのは、それが初めてでしたね。

「小劇場」っていう文化があるんだ、と思って。でもあんまりそのサークルでは活動してなくて、田島と二人で「演劇 ワークショップ 初心者」みたいに調べて。いろんなとこ行って、そこで会った人に面白い劇ないですかって聞いてみたりして…そこで、どんぐりマミーさんっていう方に、劇団献身を紹介してもらって。どんぐりマミーさんに劇団献身を紹介してもらってなかったら多分演劇続けてないんだろうなって思ったりしますね。

で、劇団献身のワークショップに行った時に、「ウッチーは早稲田の演劇サークルに入るといいよ」って言われて、それを鵜呑みにして(笑)で大学2年の時に、奥村さんが所属してた早稲田の演劇倶楽部っていうサークルに入って。でも、そこでもあんまり早稲田の友達が出来ずに…あんまり出演する機会がないなーって思ったので、せっかくだったら自分でやるか!と思って。

田島くんを誘って「演劇をやってみない?」って話になり、でも何やったらいいのか分かんなくて、とりあえず Twitter のアカウント作って、その日のうちに劇団スポーツのロゴを作って、ガワから整えようみたいな。


大石:どうして「劇団スポーツ」になったんですか?

内田:深い理由はないんですけど、その頃同世代の演劇してる人って「劇団」って名乗ってないイメージがあって。

大石:わかりますよ劇団晴天としては。(笑)

内田:だったら「劇団」ってつけようかなと。とか、お客さんに見てもらうときに、演劇やる人達ですって一発で分かってもらった方がいいかなと思って。

色々考えてて、一晩中劇団何にしようって話し合ってて…僕実家が着物屋なんで一瞬「劇団着物屋」に決まりそうになっちゃって…その当時、神楽坂に住んでて、近くにセブンイレブンがあって、ウォシュレットがついてたからたまに利用させてもらってたんですけど、一回セブン行こう、って歩いてて、田島くんに「何が好き」って聞いて、「バスケが好き」って言われて、「じゃあスポーツにしよう」ってなって。

大石:おー!

内田:あと、演劇と関係なさそうなことにしよう、っていうことと、めっちゃ覚えやすいだろうなっていうことで、劇団スポーツになりました。






竹内:僕は結構、理由が明確にあって…多部未華子さんがめっちゃ好きなんですよ。本当に中学 2年生ぐらいの時からずっと好きだったんですけど、 CM とかテレビドラマとか全部録画して DVD に落とすみたいな学生時代だったんです(笑)

それで、多部未華子さんがどうやら初舞台に出る、それが WOWOW で放送される、という情報が入って、違う高校のバスケ部の友達が WOWOW 入ってて。ダビングしてもらって見たのが「農業少女」って舞台だったんですけど、多部未華子さん目当てで見たそれがめちゃくちゃ面白くて。

高2ぐらいまでは本当に多部未華子さんと結婚したいと思ってたので(笑)これなら演劇面白そうだし、多部ちゃんに会う、っていう夢も近づくんじゃないかと思って、大学入ったら関東に行こう、演劇やろう、と思ったんですね。あ、出身は新潟で。

それで千葉大学に入って、体育学部だったんで、先生の圧も強くて最初バスケ部の体験入部に行ってしまったんですけど、だめだ!俺は何で関東に来たんだ!多部未華子さんに会うためだ!と思って、千葉大の演劇サークルに入ったんですよ。で大学四年の頃に、河西裕介さんのワークショップに行った時に、田島くんと初めて会って。劇団スポーツの名前は知ってたので。で話すようになって…


大石:後から入ったメンバーだったんですね。


竹内:そうですね、劇団スポーツの第4回公演の『略式:ハワイ』に出演したんですけど、これ恥ずかしいんですけど…人生で1番好きな舞台で、3人芝居で、俺もしかしたら、と言うか結構確信を持って、「一生こいつらと演劇やりたいかも」と思ったんですね。

その翌年に劇団スポーツの3月公演が、王子スタジオのやつが決まってて、オファーを受けてなかったんですけどクレジットされてて(笑)出演することになってたんですけど、だから相手も欲してくれてるんじゃないかと思って。

だから LINEで、 劇団スポーツに入りたいです、って田島さんに送ったんですよ。そしたら近くにいたのか、 内田がピースして「やったー!」って言ってる写真だけ送られてきて(笑)それで入りましたね。劇団スポーツに。


大石:勝手にクレジットしてたのは、内田さんとしても歓迎だった?


内田:『略式:ハワイ』では、蓮と劇団員の2人で3人芝居をやったんですよ。何も説明せずに(笑)終わった時の心持ち的には、なんか一緒にやっていくんかなーって思ってました。







創作に対して、影響を受けたもの

大石:影響を受けたものとか好きなものをとかを聞きたくてですね。竹内さんは多部未華子さんですよね。どんな高校生でした?

竹内:高校は結構エンジョイ勢でした。文化祭で演劇があったんですけど、演劇やるって決めてからはそれには絶対出ようって思ってて、3年生でそれに出て主役とかやってるみたいな感じでしたね。音楽でずっと聞いてるのは、青春ロックパンクみたいなのが大好きで…ガガガSPは、中2からずっとリピートしてます。

内田:色々ある気はするんですけど、それこそ音楽で言うと銀杏 BOYZ ずっと聞いてましたね。

大石:系統が似てますね…

内田漫画は明確にひとつ人生のバイブルがあって。「ピューと吹くジャガー」

大石:(笑)

内田:っていう、人生の全てが描かれているギャグ漫画があって。僕はあれをずっと演劇でできないかなと思ってやってる節がありますね。実写化したいですね。ハマーっていう、見てて恥ずかしくなる人間のダメなところを全部やってくれるキャラクターがいるんですけど、やりたいですね…

竹内:漫画でいうと、「今日から俺は!」は人生のバイブルですね。世代的には、不良漫画といえばクローズとかワーストとかルーキーズとかが流行ってたので、布教してました(笑)結局、かっこいいと面白いが混在してるものが大好きなんだろうなって気持ちがありますね。

あと…僕も一生演劇やっていきたい、演劇で食べて行きたい、って思ったきっかけは劇団献身なんですよね。

大石:あれ。一緒に見に行ったんでしたっけ?

内田:いや、別別に、

竹内:公演は一緒だよね。

大石:偶然に!?

竹内:第5回公演の『悪いやつは大体トモダチ以上恋人未満』っていう、ゴールデン街のおばさんに大量の目がくっついてる、みたいなすごい怖い写真のチラシだったんですけど。本当は鴻上さんの本多劇場でやってるやつを見ようとして、当日券が取れなくて仕方なくで入ったのがその劇団献身だったんですよ。本当に偶然見たその演劇にめっちゃめちゃ笑って。

ワークショップオーディションがあるよー、ってお知らせがあって。"今なら地方の農業高校の倍率ぐらいで受かります!”みたいな謳い文句があったので、じゃあ行ってみようと思って行って初めて現場について、そっからもう「演劇ってこんな面白いんだ」って気づきましたね。




脚本について

内田:今回は本当に一人でやるのが初めてで。

今まではだいたい最初にタイトルを決めて、で、タイトルを成立させる時を作ろうって田島とずっと一緒に喋って…ってやってましたね。だからタイトルに一番苦しめられます。

最初は、最近見た面白い映画の話とか、舞台の話とかしながら「なんかこんな話をしたいなー」って言いながら本番2か月前ぐらいになり焦り…っていう。最初はプロットを立てる努力をします。

大石:その通りに行きますか?

内田:行かないですね(笑)だいたいプロットとかって言ってても、書いてみたり稽古してみたりするとめっちゃ抜けがあったり、詰められてなかったりして…方向が変わっていくみたいな形になっちゃいますね。

大石:なるほど、今回はそばで見ていてどうですか?

竹内:今回は初めてづくしで、僕自身も見てて「こんな感じなんだ」って思いながらなんですけど、今まではプロットに費やす時間が取れなかったんですよね。でも今回は内田がそこにすごい時間を費やしてくれているので、お話の抜けみたいなのは今までよりもなく、台本に入った印象がありますね。

内田:これからは、お話として面白いものを、稽古場でさらに面白くしたいなっていう気持ちがあって、そのお話の面白さを担保するためにはプロットを作り込むことが必要だなって思ってます。


大石:あのー…脚本に行き詰まった時ってどうしてますか?

内田今回は色んな人に相談しまくってます。行き詰まったときって大体は自分で行き詰まったと認識していないことが多くて、あと一晩考えたら進めるだろみたいな感じで締切がどんどん後ろに伸びていく、みたいな…今回はみんながお尻を叩いてくれて。田島だったり蓮だったり、アドバイザーでついてくれてる黒澤たけるさんとかに相談してます。

目の前のここの展開を考えてると自分が本当に何を思ってこれを書きたいと思ったのかみたいな、最初に思ってた本質みたいなのを忘れてしまうことが多くて。喋っているうちに気付くことが多かったんですね。

色々試したんですけど…行き詰まってるなと思って散歩してみよう、とか、筋トレしてみよう、とか、映画を見てみようとか、試したんですけど…映画みたら「ああ面白かった!」ってなっちゃって(笑)全然進んでないやってなってしまって。あと環境を変えようと思ってホテルに行ったり…ビジネスホテル的なところで、「よっしゃ今日気合い入れてやろう!」って思って4000円ぐらいで…で、「わぁ、ホテルだぁ!」って思ってぐっすり眠って帰る。みたいな。「なんて自分はダメなやつなんだ」っていうのを繰り返してたんですよね。

大石:(笑)着想を得る方法とかってありますか?

内田:今回だと文字を書きまくってますね。メモアプリとか思いつくままに、例えば明日が締め切りだとか、みんなに会うのがすごく怖いとか、なんでもいいんですけど、気にしないままずっと書いてて、そうすると途中で使えそうなキーワードとか忘れてたこととかがちょっとずつ出てきて、その中でテーマ的なところとか、忘れてたことを少しずつ思い出していって…とにかく文字を書くってのをやりました。ライフハックの本とか読むの好きなんですけど(笑)何て言うんでしたっけ、朝5分それをやる…「ノンストップライティング」?精神を落ち着けたり、クリエイティブな仕事をするために…みたいなやつなんですけど(笑)

ああいうまとめ読むのすごく好きなんですけど、これは性に合ってましたね。



大石:ここまでは脚本の作り方を主にお伺いしたんですけど、稽古場とかで、演劇をつくる時に大切にしてること…みたいな、ありますか?

竹内:僕は結構俳優目線なんですけど、なんか舞台上にいる人を見て、「自分もそれになり得るな」って思えるくらい人間味があったりすると、「すげー今なんか自分に還元されてるな」みたいな気持ちになれるんですよね。リアリティがあると言うか。自分も舞台に立つ時はそうなってもらえたらいいなという気持ちでやってます。できてるかは別として(笑)

内田:一つ言えるのは…書く内容として相応しいかわからないんですけど、

大石:気にせず!

内田:演劇の稽古に入る前に、必ず演劇と関係ないゲームで遊ぶ、っていうのは、結構大切にしてます。

今で言うとゾンカマっていうカードゲームをやってたりしますね。それは、僕が他の現場でやるときそれこそ自分で感じてるものなんですけど…家で考えたり準備したりして、そのことで頭がいっぱいになって稽古をすると大体うまくいかないことの方が多くて。直前に雑談があったり、トラブルがあったりして気が他の方向に向いていて、でも結構テンションは上がってる状態だったりして、そこで「じゃあ稽古!」ってなると、「準備してきたものとか考えてきたものをそのまま頭でっかちにやらなくていい」と言うか「なんか保証が無いから相手に任せてみよう」とか「今日の感じでやってみようか」っていう、諦めがついたりして

頭で考えてきたものを、最終的には肉体化して考えずにやれるようになるっていうのが、演劇で見てて人が生きてるなって思う瞬間なので、そうなるようにやりたいです。こういう解釈でこういうプランで臨んだけどやってみたらちょっと違くって、でもそっちでも全然合わせられるよみたいな。セッションみたいになるといいなって思ってるんですよ、即興セッション。

ただゲームに熱が入りすぎて長引いちゃう時もあります(笑)どんどんライトレフトみたいなアップゲームに飽きてきて、追加ルールとかローカルルールを増やしまくって…高度なスポーツの試合みたいになってる時があって(笑)

竹内:あるね。


今回の話について

内田:まず最初は、2年前やろうとしてた『怖え劇』っていうのがあって、それは稽古したり本番を迎えたりする劇団の人たちが出てくる話で、本番の中で役者が一人ずつ猫になってしまうっていう作品を作っていて(笑)

大石:すごいですね(笑)

内田:一人ずつ「にゃん」しか言えなくなっていって…っていうところまで台本があったんですよ。でも2年ぶりに『怖え劇』ってタイトルでやろうってなった時に、「その話ってどこに向かうんだろう」っていうのが全然わからなくて(笑)2年前の俺たちはさも当然のように「こうこうこういうことがあって猫になっていくんだよ!!」って役者たちに説明してたんですけど、さっぱり分からなくなっちゃって(笑)1回もうリセットして考え直すことにしました。

次に…UberEatsをバイトでやってたんですけど、それで配達員達が延々と待たされるお芝居を作りたいなーと思って。注文を取りに来たんだけど料理が出てこないっていうのをやってみて、作るのマジでめっちゃ難しいんだなってことに気づいて…ゴドーを待ちながらって本当すごいことしたんだなっていうことに気づいて、

竹内:本当にその台本になったら、1時間何もしない舞台ができそうでした。

内田:で、自分はずっと劇団の話を、本当はやりたかったなあと気づいて、というか自分が一人で書くんだったら最初に、劇団の話をやっちゃおうと。なおかつ…なんだろう、暴力の話を書きたいなって思ったんですよ。

















大石:暴力。

内田:暴力っていうのは、正確に「暴れる」「力」の暴力で…僕が演劇やってる時にたまに感じること?演出家だけが暴れる力、暴力を持ってて、役者はその力を剥奪されていると言うか。「与えられているこの中で生きなさい」と言われていたり「言われている演出を忠実にこなさなきゃいけない」って狭められている感覚を、打ち破ってやる話。を作ってみたいなって思って、それは…

なんか…なんだろうなぁ。高校の部活で剣道をやってたんですけどすごく辛くて、割と厳しめの部活で先生も厳しくて、全く楽しくなかったんですよね。友達は好きだったし、先輩も後輩も好きだったけど部活に行く時間っていうのは本当に嫌で嫌で仕方なくて、でもわりと強化指定の部活だったからずっと稽古と練習試合ばかりしていて。

その時の自分って、別にやめてもいいはずだったのに部活だったから。そっから逃げ出してもいいのし、もっと演劇を見てたかったなーとか、音楽をやってみたかったなぁとか、もっと本読みたかったなー、とか思ってたけどできなかった自分がいて。

今トンネルの中にいる人って、外側が想像できなくなっちゃったりしているんじゃないかと。その外側には楽しい世界とかいま自分が見てる世界とは違う世界があるって事に気付けなくなっちゃうなーってずっと思ってて、それを演劇の力でぶち破ってみてえなって、それをやれないかなってところから始まりましたね。

だから話としては劇団の中でパワハラが起きて、演出家の命令に従わなくちゃいけない僕らは、そこからどうやって脱出できるだろうか、外側にいけるだろうかっていうことにトライしていくっていう話になってますね。

竹内:脚本読んで、支配する側とされる側の対立がしっかり書かれていて、内田もよく言うてるんですけど今まで劇団スポーツって対立が描かれてなかったんですよね。同じぐらいの状況の人たちが同じ問題を抱えてて、でも各々思うことは違う、みたいなところのズレを楽しんでたりしたんですけど、

今回のその相手との対立みたいなのは、今まで劇団スポーツではやってなかったんで…というか、演劇の基本かなって(笑)対立構造と葛藤みたいな、演劇の基本やろうかな、やるのかなみたいな。



配達員にサービスがあります

内田:ひとつ見どころ…見どころと言うか今回その劇団の話をやるんですけど、劇団の話とゴーストレストランの話を同時にやろうと思ってて。

大石ガストの中に唐揚げ屋があるみたいなやつですよね。

内田:そうですね、Uberとか出前館とかの、出前専門のお店があって客席とかなくて料理出すだけの場所っていうのがあって、演劇で初めてその場所をやろうとしてんじゃないかなと思ってます(笑)

竹内:知らない人は知らないもんね。

内田:ウーバーイーツの配達員の人たちが出てくるんで、今週発表しようと思うんですけど、Uberとか出前館とかフードパンダとかの配達員をやったことがある人には、何かサービスがつきます(笑)


内田:あと…そういえば今回の、というか影響を受けた作品、で言うと、アニメ映画の押井守監督がすごい好きで、攻殻機動隊とかイノセンスとかうる星やつらとかを作った人なんですけど、なんで好きなんだろうなーって今考えてたんですけど…

ずっと好きで、ちょっとメタというか。自分が見ている外の世界があるかもしれない、とか、作り物かもしれない、とか、ちょっと思考実験っぽい作画が入ってたりして、そういうのに常に心くすぐられるんだろうなと思ってて。

大分にいたときからずっと東京に行こうと思ってて、大分の土地の外にはもっといろんな世界が広がっているんだろうみたいなワクワクが常にあって…それは作品に結構影響を受けてるなって思いますね。

大石:確かに劇団スポーツの芝居って、昔観劇させてもらった演目は、「演劇であること」をメタるみたいな感じがありましたね。

内田:僕が舞台上でやってて一番楽しいのが、「劇の進行と全く関係ないボケをやる」なんですよ。ギリ演劇の舞台だからできる笑いみたいなの。演劇って、「人が見て、人が喋って、それをお客さんが信じてもらえれば、どんな光景だって描けるんだ」みたいな最近あまり聞かなくなった、そういう“演劇の力”みたいなやつ。それが一番面白いなと思ってて、今回も…だからちょっと原点回帰というか、そういう演劇の力を存分に使うお芝居になると思います。最近あまりそういう作品の作り方ではなく、物語をちゃんと作ってみようみたいなことにトライしてたので。

大石:なるほど、確かに「ルースター」は、今まで構造に寄ってた感じがありましたね。じゃあ今回は、「物語の構造もありつつ」「演劇的なことにチャレンジしよう」みたいな、合わせ技的な感じになるんですかね。

内田:そうですね、見立て?とか、見立て?メタ?とかを使ってます。

竹内:演劇?

内田:演劇の嘘?

竹内:それじゃない?一番言わなきゃいけなかったのは

内田:演劇の嘘。演劇でしかできない嘘を、思いっきり使い倒す演劇になると思います!

(聞き手・大石晟雄)


劇団スポーツさんは、「勝手に!劇団スポーツとはしご割」(田島さんによる他団体レビューも!)や、「竹内蓮のパクパク食べよう王子ごはん」など、独自の企画も行っています!要チェック!


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