佐藤佐吉演劇祭2022の関連企画として開催される『見本市』
活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います
【公演詳細】
佐藤佐吉演劇祭2022 関連企画 ショーケース公演「見本市」
2022年4月7日(木)ー10日(日)@北とぴあ カナリアホール
佐藤佐吉演劇祭2022 関連企画 ショーケース公演「見本市」
2022年4月7日(木)ー10日(日)@北とぴあ カナリアホール
みなさん、はじめまして。インタビュアーの平井です
見本市の"カタログ"をつくろうと始まった、このインタビュー企画
未知の存在ーーUMA(ウルトラ・ミラクル・あたらしい)でもある、なんともキュートで愛くるしい彼彼女らの"これまで”と"これから"を聞き出してきました
ここでしか聞けないような話も目白押しなんです。ぜひ最後まで見ていってください!
「見本市カタログをつくろう」第6回目のゲストはSHIMAISHIBAI主宰の藤井千咲子さんです
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【ゲストプロフィール】
藤井千咲子 https://shimaishibai.com/chisakofujii(SHIMAISHIBAI https://shimaishibai.com/)
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1990年4月30日大阪府東大阪市生まれ。俳優。演劇ユニット「SHIMAISHIBAI」代表(脚本・演出)。歌と楽器演奏に特化し、ミュージカル作品に多数出演。猫のオリーブとジンジャーと東京暮らし。
〜おうち時間にオススメの一品〜
・リン=マニュエル・ミランダ「Tick, tick... BOOM! 」
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女性ばっかりの演劇ユニット
藤井:SHIMAISHIBAIは、2021年の5月23日に結成した団体です。私、藤井千咲子(ふじいちさこ)と、重松文(しげまつあや)の、俳優2人の演劇ユニットです。
今回が旗揚げ公演になります。「”女性ばっかりの演劇ユニット”を作ろう」と思って始めたのですが、ずっと2人だけでやっていくという感じではなく、おいおい一緒にやっていけそうな人が見つかればメンバーを増やしていこうと思っています。
私のプロフィールとしては――
大阪府東大阪市出身で、4月30日生まれです笑
私も重松も、それぞれ俳優として、どこかの団体さんの作品に出させていただいたり、役者としての活動しかずっとしてこなかった2人なんです。
今回SHIMAISHIBAIを立ち上げたことで、私はずっとやりたかった作家活動と演出家としての活動を始めました。
もともと”男性ばっかりの集団”にちょっと憧れがあるんですよ。
「"TEAM NACS"をきっかけに芝居を始めた」というのもあります。
男性ばかりが集まって、わちゃわちゃするの、すごい可愛いじゃないですか笑
身の回りに男友達が多いというのもあるんですけど――
男性って裸になって笑えたり、下半身見せて笑えたりするじゃないですか笑 健康的というか。
やっぱり羨ましいんですよ。女ってそれができないし、してもあんまり面白くないから。
「財布にあるの、300円だけやねん」とかいう話も、なんか男だったらギャハハハって笑えるんですけど、女の子だったら「大丈夫?」みたいな、笑いのベクトルというか、もともと持っているものが違う。
全然性差別じゃないんですけど、「(違いは)絶対的にあるな」とずっと思っていました。でも仕方ないというか、私は女性なので。
だったら、”女性の面倒くさいところ”とか、”愚かで可愛いところ”とか、”ドロドロしてるところ”。女の子のそういうところを無いことにして、男性のマネゴトをやっていくより、「女を全面に出した方が面白いんじゃないかな」と思って。女性のそういうところも結構可愛くて好きなんです。
"コンプレックス"と思っていたところを逆手に取っていけたら面白いんじゃないかな、と思ったのが、団体の方針を決めた最初のところでしたね。
誰かに「やって」と言われたわけでもない
藤井:ものを書くのがそもそも好きだったんですよ。
昔からブログの更新だったり、"自分の考えていること"を言葉にするのが好きだったんです。
でも「作家になろう」とか「演出家をやろう」と思ったことはたぶん無くて、創られているものに出していただく立場で――
役者として今まで一生懸命というか、必死だったというのもあって、余裕がなかったんです。
誰かの作品に出していただきながら、「私だったらどうするかな」というのを考えることはありました。
なので「(作家活動を)やりたいんだろうな」とは自分でもうすうす思っていたんですね。
SHIMAISHIBAIをやろうと思った時も、自分から「作演は私がやります」と言ったんです。誰かに「やって」と言われたわけでもない。"できるかどうか"はまたちょっと別問題ですが。
でも物語を書かないといけないから、自分の考えていることとか、日々のエッセイをnote(クリエイターが文章やマンガ、写真、音声を投稿することができるプラットフォーム)に、練習も兼ねて書き出したんです。
人目に触れるところに自分の文章を出すことに慣れようと思って、まずやりだしたんです。
そこで"私がすごく好きな作家の方"に、文章を褒めていただいたんですよ。
ご本人はそんなつもりなかったかもしれないんですけど、「書いてもいいかもしれない」と初めて肯定していただいた気持ちになって。
「ちゃんともの書ける人になって、褒められたいな」と思ったんですよね。
他にも「文章面白いね」とか「もっと書いて」みたいなことを、言ってくれる人が意外といたり。
嬉しいですね笑
バンドしかやってこなかった
藤井:"mixi"って覚えていますか? mixiで、すごくマメに書いていた時期もありましたね。10代の終わりぐらいに熱中していました。
周りのギャルたちが「ミク友募集、イエーイ!」みたいな感じで使っている中、コツコツ自分のブログを書くみたいな使い方をしていて、全然キャピッてなかったんですよね笑 「イエーイ!」みたいな使い方はできず。
ギャルとかヤンキーとか、目立つ子たちが友達だったんですけど、学生時代はずっと、本を読んだり音楽を聴いたりしてました。
演劇を始めたのが26、27歳のときになるんですけど、それまではバンドしかやってこなかった。"歌モノ系のロックバンド"をやっていました。
私はドラムコーラスでした。たぶんドラムをやる人は根っこが暗いです笑
夢中になってること以外を頭に入れる容量がない
藤井:自分でも自分がよく分からないんですよね。
明るい時もあるんですけど、めっちゃひとりも好きですし。渋谷は嫌いです笑
友達は幸い多いし、恵まれていますね。
今でも仲良くしてくれている友達は、バンド時代に知り合った人たちが多いです。
「演劇を始めるんだ」と言った時に、離れていった人もいますが、そのまま"演劇をする私"を応援してくれる人たちもいて、そういう人とは未だに仲がいいですね。
演劇を始めて以降に出会った人たちは、友達というより”同志”という感じがします。
演劇の現場でご一緒した人たちとは、"一緒にディズニーランドに行くような仲の良さ"というよりは"お互いの活動を応援しあうような仲"な気がしています。
私、夢中になってること以外を頭に入れる容量がないんです。しょぼいスペックのパソコンなんですよ笑
器用じゃないから、「遊ぶ時間があったら(創作に関わる)何かをしていたい」とか、「生活に関連づけられるか」とか、そういうことをいつも考えてしまいます。
SHIMAISHIBAIができて変わりました
藤井:私の好きなものは、うちの飼い猫の”オリーブ”と”ジンジャー”。それとコーヒー、お酒、ブロッコリー、散歩、温泉。
ブロッコリーは、茹でて塩とオリーブオイルと一緒に食べるのが1番好きです笑
飼い猫の”オリーブ”と”ジンジャー”は、手のひらに乗るぐらいの子猫のときに2匹とも引き取って、自分の子供みたいな感じです笑
毎日カワイイです。「どんな時にカワイイ」とかじゃないですね。永遠にカワイイです。
「いつ可愛くなくなるんかな」と思って、「なんでそんなにいっつもカワイイの?」「いつブスになんの?」と語りかけています笑
お酒に関しては、家で1人で飲むのが好きだったんですけど、眠くなっちゃうし頭も回らなくなっちゃうので、SHIMAISHIBAIができて変わりました。
作業の時間もだいたい夜なんですよ。
なので、何もかも終わった深夜4時頃に飲むか、ご飯の時にちょろっと飲んで、みたいな、ちょっと遠慮した飲み方しかできなくなりました。
外にご飯に行ったり、誰かといる時ぐらいは忘れて飲もうかなと思ってはいるんですけど、コロナ禍でそれすらもできないという――
”ポイズン”ですよね笑
(飼い猫の"オリーブ"と"ジンジャー")
来ない存在をいつまでも待っている
藤井:今回参加する作品は、もう初稿があがっているんです。
短編というのもあって、分かりよい話にしたつもりです。
話のテーマとしたのは、(登場人物2人が)「来ない存在をいつまでも待っている」「なんで待ち続けるんだろう」というところです。
本心では"動き出したい"と思っているのに「待っている方が怖くないから、動かないのか」「動き出して、本当のことを知るのが怖いのか」。
”本当はもう行っていいよ"という状態になっているはずなのに、"前に進めないのは?”と見つめ直すことから、今回は始めています。
登場人物の1人は私が演じる、"とある施設の職員"です。
もう1人は劇団員の重松が演じる、"その施設に収容されている存在"。
その二人芝居になります。
重松さん(劇団員)の初稿への反応は上々でした笑
バンドをやっていた頃と変わりない
藤井:私は役者としても、今後もSHIMAISHIBAIの作品に出たいので、自分の役ありきで書いていくつもりです。
「バンドをやっていた頃とやっていることは、そう変わりないな」と思います。
根底にあるのは、「誰も自分(私)のことを本当の意味では必要としていないので、自分が自分を1番必要として、自分がいないと”自分が大変だ”という状況に早くしたかった気持ち」なんです。
「いてもいなくても一緒だ」という状態から、とにかく「自分を愛せるような状況にしたいな」と思ったのが最初だった。それはずっと創作に携わるエンジンになっている。
"私が誰よりも私を必要にしよう"と思っています。
やっぱり焦りもあります。
オーディションの落選の報せとかも、やっぱり常日頃届くし、その中で嬉しいことにご縁がつながって現場に入らせていただくことももちろんあるけど――
SHIMAISHIBAIを「今やな」と思って去年の5月に作った時、本当に何も無かったんですよ。
やることが何もなくて、少しパニックになりました。
人によっては「時間ができたから、ゆっくりしよう」と思うかもしれないけど、焦っていました。
別に(何もしなくても)生きていけるじゃないですか。
でも、バイトで生活費を稼ぐだけだったら「もう死んでるやん」と思ったんです。
その時期が本当にイヤだったんですよ。
前から「(劇団)やりたいな」と思っていたから、「今やな」と思って、ガッと話を進めて、とにかくがむしゃらに「今日からできることってなんや」と考えて、とりあえず「顔を知ってもらおう」とYoutubeを始めたりしました。
誰かがもしかしたら「”何やってんねんアイツら”と笑っているかもしれんな」とも思いながら、そんなことを気にしても仕方ないから、どうでもいいからとにかくやり始めて、ものを書き始めて、ヘッタクソやなと思いながら、でも”もがくしかない”。
とりあえず「やるしかないねん、やるぞ」という状況にして、やり始めて、やってみて初めて「あ、私、意外とやりたいこととか、作りたいものをめちゃくちゃ持ってたんやな」と思ったんですよね。
最初にあったのはたぶん焦りだったり「必要とされたい」とかそういう欲求だったし、今もずっとあるんですけど、それよりはもうちょっと明るくなったというか、健康になったかな。
(創作する)動機としては、「やりたいことがいっぱいあるから、やりたい」です。
衝撃を受けたパフォーマンス
藤井:去年の末に、”泊まれる演劇”という作品に役者として参加したんですけど、”イマーシブシアター”というジャンルなんです。
実際に”観客が宿泊できるホテル”で演じるんです。
お客さんが行った先で何かイベントが起こっているのをお客様自身で目撃するんです。
”同時多発的”にホテル内でそういうことが起こっているから、自分の目で観たものしか観れないし、自分の意思で選んだ場所で、自分で選んだストーリーしか観れないんですけど、そういう”不自由さ”がすごい「ロマンチックだな」と思いました。
”没入型演劇”なので、ちゃんと席におっちゃんこして大人しく観るものじゃないというのも、面白いなと思いました。
客席と劇場の舞台の間には、”第四の壁”があるじゃないですか。
それが「本当に無い」というのを、出演者側として体験しました。「これは好きな人がいっぱいおるぞ」と思いましたね。
前々から、劇場でお酒を飲んだり、ご飯食べながら、生で観れるものをやりたいとずっと思っているんです。
もっとライブハウスでバンドを観るような、「"ライブ的な楽しみ方"を演劇でできないのかしら」と。
それに結構近いものがあったというか――
お客さんも、役者ではないのに、演じていらっしゃるんですよ。私が聞いたことに対して、自分の話をしてくれる。
そういう「私(役者)とお客さんの間に壁が全くない」というのが、本当にステキだったんです。
「自分の作品でも何か使えないかな」と思いますね。
"劇場で生で、音や光、お芝居を浴びて、体験しに来ているのが演劇"だと思っているので、"そこでしかどうしても味わえない"からやっぱり中毒にもなるし、絶対に演劇は無くならないんだろうなと思っています。
真新しい挑戦ができるのはやっぱり、私たちみたいな「”まだ何も持ってない団体”だったりするのかな」と思うので、「”何も持っていないやつら”こそ挑戦するべきだな」と思っています。
(「泊まれる演劇」【藍色飯店】の公式写真)
(演劇に)最初は引いた
藤井:演劇とちゃんと出会ったのは、(参加していた)バンドが解散した直後のことです。2年ぐらい本当に何にもできなくて、「水曜どうでしょう」ばっかり観ていました。
(「水曜どうでしょう」は)本当に誰も傷つけないし最高ですよね笑。
その時に、「水曜どうでしょう」で「さっきから"TEAM NACS"とおっしゃっているけど、なんなんだろう」と思って、「ああ、劇団なんだ」となり、調べてみたらTSUTAYAで作品映像を借りられたんです。
「LOOSER~失い続けてしまうアルバム~」という作品を観て、それが原体験ですね。
すごかったです。なんか、最初は引いたんですよ笑
安田顕さんの役がほぼ全裸で、赤いフンドシで、すごい目を剥いて、口をめっちゃ大きく開いて、「芹沢鴨だー!」みたいなことを言うシーンがあるんですけど、「何してんねやろ、この人」と思ったんです笑
なんか目を剥いていて怖いし。
普段生きていて、そんなに目を剥くことなんてないじゃないですか笑。
「すごい大きい声だな」とか、そういうことが最初なんですけど、やけにドキドキして、忘れられなかったんですよ。
物語に感動したとかより「なんかすごいものを観てしまった」みたいな感じが近くて。
でも、”引いた”のに、観終わって(演劇を)すごくやりたくなったんです。
その日から狂ったように芝居の映像を観ました。
でも「(舞台は)映像じゃないかもしれない」と気づいて、「(直接)観に行かなきゃいけないのかもしれないな」と気づいてしまって笑
その時はまだ、小劇場とか知らなかったんですよ。芝居が”直に観れるもの”だと知らなくて笑
小泉今日子さんがプロデュースされているお芝居のチケットを、自分の誕生日かなにかのプレゼントとして取って観に行きました。
「(役者が)ほんまにおるわ」って思いました笑 静かにめっちゃ興奮したのを覚えています。
「その時の衝撃が無かったら、演劇をやっていないな」と思いますね。本当にありがたい。
TEAM NACSだって「この小娘の人生を変えたろう」と思ってやっているわけじゃないでしょうけど、簡単に変わってしまった。
それはある意味、"すごい暴力的な行為"でもあるんだなと今でも思います。
自分でも演劇をやりながら、「簡単に人の人生を変えてしまうかもしれない」というヤバさみたいなのは、ずっと思ってますね。
私は”メモ型”
藤井:創作スタイルについて、「私は”メモ型”だな」と思っています。
「これは面白いかもしれないな」「あれどうしようかな」とか、面白いかどうかは置いておいて、気になったことを全部メモしています。
執筆にあたって、初めに「こういう話にしよう」という大枠は決めるんですけど、その時に「その大枠一辺倒」だと面白くないし、それを別に"作品"とは思えない。
「じゃあ、組み合わせるか」と。”組み合わせる”という言い方って全然色気ないですけど笑
今回も全然違うものと絡んでいき、仕上がったものは(最初に想定したものとは)全く別のものになりました。
でも「最初に自分が”描きたかった”話」からはズレていません。
”異種混同”というか、いろんなものと話を絡めていっています。
TVニュースを観ていて、「面白いな」と思うこともありますね。
ただ、「コンテンツとして面白いな」と思っても、実際のニュースには実際に悲しんでる人がいらっしゃるはずなので、あんまりそれをドカンとやりたい気はしていません。
「この人はなんでこんなことをしたんだろうな」「(猟奇的な事件があって加害者がピックアップされた時などに)たぶん自分で”頭おかしいねん”と思ってないよな」とかを考えたりはします。
「なんで?」と思ったところは、わりとメモするかもしれないですね。
道路1つを見ていても、本当は道路を作るだけでもいいのに、道路の横に逃げられるスペースも作るじゃないですか。
「緊急時に備えて最初にスペースを用意した人すごいな」とか思います。
想像するのは楽しい。タダなんで笑 自分の中での娯楽です。
今回の作品タイトルは「エレファンドッグシンドローム」
藤井:今回参加する作品タイトルは「エレファンドッグシンドローム」です。
”エレファントシンドローム”という現象があるんですよ。
サーカスで飼われているゾウさんは、小さい時に頑丈な鎖に繋がれて育っているらしいんですね。でもゾウってすごく大きくなるし、力持ちになるじゃないですか?
ただ、ちっちゃい時の、”絶対に逃げられない”という経験が刷り込まれているから、大きくなっても逃げようとしないらしいんですよ。
その"心理学的な現象"を用いたくて、タイトルに取り入れました。
おうち時間にオススメの一品は「tick,tick,...BOOM!」
藤井:この間Netflixで観た「tick,tick,...BOOM!」という作品がオススメです。
"何かを創ったり創作している方"だったら観た方がいいなと思います。
実在する作曲家のジョナサン・ラーソンが売れていない状態から、話が始まるんです。それで、30歳を手前にして、「30歳を迎えて売れていないなんて、死んでいるのと一緒なんだよ」みたいなこと言うんです。
だけど結局、30歳を超えても、自分の生活を何もかもを犠牲にして作った作品も売れないんです。
この作品は、"シンデレラストーリー"でも"サクセスストーリー"でもないんです。
私たちは、未来にいるから、この人がその後にすごい作品を創って、世界的に有名になって、「tick,tick,...BOOM!」がアンドリュー・ガーフィールド主演でNetflixで配信されることも知っているけど、この作品に出てくる本人はそれを知らないから、「自分はこの後どうなるんだろう」と思っているんです。
それってでも、私たちと一緒だし。
(表現活動を)やめられないんですよね。
創作や自分のやりたいことをやめてしまったら楽なのに、やめられない。
やめることは、死んでいるのと一緒だし、死にたくない。
作中の彼はどん底なんです。電気が止まったりして、どん底なんですけど、どん底の中でも恋人がいて、その彼女との別れ話の瞬間ですら、「これは次の曲になるかも」と思っちゃう。
そのシーンがすごく好きで。”ええかっこしい”に聞こえたらイヤなんですけど「わかるわぁ」と思って。
日常生活で、嫌なことや嬉しいことがあった時に、自分が当事者なのに、どこかで「やった! 素材ゲット」みたいな。
でも、私の周りにいる”何か創っているひと”はみんなそうなんですよね。
どんな嫌なことも嬉しいことも、全部使うんですよね。「そういう生き物なんだよな」と良くも悪くも感じます。
だから友達も限られていく。
でも仕方ないし、「そういう生き物が好きなんだろうな」と改めて、この作品を通して思いました。
そのシーンを「サイテー」と言う人も絶対いるんですけど、ただ「女の人が可哀想」みたいなところで終わるんじゃなくて、私は「そらそうだよね」と思ったんですよ。
私も「この男サイテー」で流せていたら、人生もうちょっと楽しかったかもしれないけど笑
でも「ああ、そうだよね」と思える人生でよかったなとも思ったので、あのシーンは何か創っている人だったら面白いんじゃないかなと思いました。
とはいえ私も、自分にお金が無いのはめっちゃイヤですけどね笑
SHIMAISHIBAIの団体としての作品
藤井:今回の作品について、「とりあえず観て」と思っています。
私たちとして1番”負け”なのは、「頑張っていたね」とか「誰々ちゃん可愛かった」とか、そうなると負けですね。
感想なんてお任せするんですけど、例えば「動いてる『ぶんちゃん』見れたー」とか、そういうところにいってしまうともう、負けです笑
絶対それで終わらないものを持っていくので、「とにかく観て」と思っています。
※次回は明日、キルハトッテ主宰 山本真生さんのインタビュー記事です。次回もまたお会いしましょう!
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