第4回寄稿 食む派「生活と芸術」

       佐藤佐吉演劇祭2022の関連企画として開催される『見本市』

活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います
【公演詳細】
佐藤佐吉演劇祭2022 関連企画 ショーケース公演「見本市」
2022年4月7日(木)ー10日(日)@北とぴあ カナリアホール

みなさん、はじめまして。窓口担当の平井です
見本市の"カタログ"をつくるべく、インタビュー企画に続いて"団体からの寄稿"を集めました
今度は彼彼女ら自身の"言葉"に耳を澄ませてみてください✨
「見本市カタログをつくろう」第4回目の寄稿は食む派さんからお寄せいただきました




食む派(「見本市」Bチーム)
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はぎわら水雨子が主宰する演劇ユニット。2022年1月に立ち上げ。
読み方は「はむは(hamuha)」。現在、メンバーははぎわら水雨子ひとりです。
ユニット名は、食を中心に生活を考える気持ちと、柔らかくもどこかシュールで少しグロテスクな響きから由来して名付けられました。生活や暮らしの身近なモチーフを、コミック的表現を用いてしれっと風変わりに取り上げ、最終的に「そう言われたらそうかもしれない」と妙な納得感をもたらす作風が特徴です。
Twitter=@868hamuha868
Instagram=@8ham6uha8
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 先ほど、炊飯器の炊飯ボタンを押しました。
 ご飯が炊き上がるまで、今回の企画に寄せた寄稿文を書こうと思います。

 みなさんお元気ですか?
 はじめまして、食む派のはぎわら水雨子(はぎわら・みうこ)と申します。
 これが掲載される頃には、今よりほんの少しだけでも、全国のコロナウイルス感染者数は落ち着いているでしょうか。今よりほんの少しだけでも、戦争が平和に向けて進展しているでしょうか。
 こういう感じの書き出しってSFとか空想の中だけしか見ない文面だと思っていたけど、今となっては何らおかしくない現実的な表現なんだな、というのがやっぱり何度でもびっくりしてしまいます。
 私ももしかしたらウイルスに感染して、病に伏しながら公開されたこの寄稿文を読み返しているかもしれないし。

 さて、「見本市」です。活動最初期の団体を集めたショーケース公演企画。
 舞台の何かしらをやり始めてから9年くらい経ちました。初めて舞台に関わったときから、「いつか自分の団体を立ち上げよう」とぼんやり展望を抱いていて、それからというもの、小劇場から大劇場まで、とにかく色んな場所で色んな仕事をして経験や知識をある程度蓄えながら、ここに来て演劇ユニット『食む派』を立ち上げることができました。
 これもひとえに今まで関わってくれた全ての方のおかげです。私がこの場にいられることは今までの人生の結果だなと思います。
 そして未曾有のコロナ禍で団体の立ち上げをどうしたらいいかと迷っていたところに、超グッドタイミングでこのような企画を発足してくださった佐藤佐吉演劇祭実行委員会の皆様にも感謝申し上げます。
 とにかく色々なことに導かれているなあとしみじみ思います。

 これを書いている時点ではまだ稽古は始まっていませんが、今回見本市では食む派として『パへ』という短編作品を発表する予定です。最後に舞台で演出を担当したのは4年前、自分の脚本となると6年も前になるので、とにかく楽しみではあるけど緊張もたくさんしています。思っていることがどこまで実現できるのか、挑戦する気持ちと戦々恐々とする気持ちが入り混じっています。
 書いてるといつもいつも「これは面白いのか?」「お客さんがポカンとしないだろうか?」という不安でいっぱいになります。でも、毎回毎回、「この感覚って、ある!わかる!」と思ってくれる人もきっといる、とも思います。とにかくその希望をたよりに書いたりもします。
 今回は食む派ってどんなことをやるの、どんなかんじなの、というところを30分の間に存分に堪能してもらえるといいなあと思いながら書き進めています。あまり考えすぎず、いつも通りやりたいようにと一旦自由に書いてみたら、公演時間を大幅にオーバーしてしまい、泣く泣く削ったりもしています。
 今までの人生で戯曲以外にも色んな作品を書(描)いてきましたが、なぜだがそれぞれのエッセンスがあれよあれよと含まれた、旗揚げのはずがすでに集大成のような作品になりそうです。ちゃんと食む派らしい作品になりそう、とホッとしつつ、不安もありつつ。

 このコロナ禍だと余計に、なぜ今やるのか?どうしてやるのか?という問いが命レベルで降りかかってくるような気がします。極端な話、命を賭してでもやる覚悟があるのかと常に問われているような感じで、それはコロナがなくたって本当は同じなんだけど、目を背ける暇もないくらい、ありありと立ち現れてくるというか。
やっぱり私も例に漏れず、生活面でもしっかりコロナの影響を受けてしまい、肉体のみならず金銭とか精神とか、色々な面で「舞台って、演劇って続けることが大変だな」と改めて思ったりもしました。
 表現活動って別にやらなくても生きていけるのに、時にはご飯や睡眠を後回しにしてしまうくらい大切な存在になったりします。でも続けるためには、ご飯や睡眠をしっかりとらなきゃいけない。難しいです。
 今これを書いている一週間前くらいまでは先々のことをたくさん考えてしまいぐったりしすぎてもうダメかも、と思ったりしましたが、なんとか、炊飯器でご飯が炊き上がるのを待っている状態まで元気が出てきました。
 『健康で文化的な最低限度の生活』という言葉を中学校で習った時には、ふーんとしか思いませんでしたが、大人になって芸術に携わる今、身に沁みて重みを感じます。
 食む派、という名前も、生活をまず大事にしよう、という気持ちがあって名付けたところがあります。
 とりあえず寝る。食べる。芸術をやるのはそれから。でも、あんまり眠れない、食べられない人がいたとして、この公演を観て、ふとした時に眠ったり食べたりする気力が少しでも湧くことがあったら嬉しいなあと思います。

 皆さんも自分の健康と生活を大切に。その上で、よかったらぜひ、観に来てください。
 まもなくご飯が炊けます。今日は餃子です。お味噌汁にはお麩を載せて。




◎作品情報◎

食む派「パヘ」

~あらすじ~
歩き方教室で出会った男女。帰り道に食べるパフェ。
噛み合わないふたりの言葉と歩みが近づくとき、それぞれの人生が交差しはじめていく……
お腹がすいてもいなくても、胃と脳をゆるやかに揺さぶる水平歩行会話劇。

~脚本と演出~
はぎわら水雨子

~出演者~
日下七海(安住の地)、鳥島明(はえぎわ)

~参加チーム・タイムテーブル~
Bチーム
2022年4月
7日(木)19:00
8日(金)15:00
9日(土)15:00※
※=終演後にアフタートーク有(約20分予定)

受付は開演の30分前。開場は20分前。
上演時間は約100分予定(1団体につき約30分の上演)。

◎以上◎

※次回は明日、蔭山あんなさんからの寄稿です。次回もまたお会いしましょう!
 なお、記事の一覧はコチラよりご高覧いただけます。

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