第1回寄稿 紙魚「稽古初日」

          佐藤佐吉演劇祭2022の関連企画として開催される『見本市』

活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います
【公演詳細】
佐藤佐吉演劇祭2022 関連企画 ショーケース公演「見本市」
2022年4月7日(木)ー10日(日)@北とぴあ カナリアホール

みなさん、はじめまして。窓口担当の平井です
見本市の"カタログ"をつくるべく、インタビュー企画に続いて"団体からの寄稿"を集めました
今度は彼彼女ら自身の"言葉"に耳を澄ませてみてください✨ 
「見本市カタログをつくろう」第1回目の寄稿は紙魚さんからお寄せいただきました



稽古初日

 

 はじめまして、Aチームに出演する「紙魚」です。

 3月15日より見本市で発表する作品「劇的なるものをめぐってまごつく二人」の稽古が本格的に始動しました。シェイクスピア、別役実、川柳川柳、イヨネスコ、三波春夫、サラケイン、三好十郎......。様々なところから言葉を引用した内容になりそうです。今回は稽古初日のレポートを当日の参加者全員に書いてもらいました。



濱吉清太朗 構成・演出

 3月15日本格的に稽古開始。1ヶ月以上ぶりの稽古。
 12月はオリンピック憲章の読解をオンラインで、1月は時間や呼吸のコントロールに関する訓練を対面で行った。その訓練はPT体操と呼ばれるものや、太田省吾の「水の駅」を参考にした歩行の訓練、椅子取りゲーム、ダッシュを行った。それができるできないは基準ではなく、それを行おうと努める俳優の姿が尊く感じた。今回の出演者二人は体力や言葉のチョイス等殆ど全てのことが真逆なのに話をすると気が合うという感じが毎回見ていてとても面白い。
 2月は私自身別作品の稽古が静岡であり、今作の台本を書いて送っては修正してということを繰り返していた。
 そんなこんなで今日から稽古が本格的に始まった。私は私(濱吉清太朗)の物語としての今作を「私達の作品」にすることが今回の稽古の意義としている。
 その為雑談をして色んな話をすることはとても重要だ。でも毎回どんな話をしていても結局恋愛話に落ち着く。人の恋愛失敗体験を聞くのも楽しいし、自分のを話すのも楽しい。全員ロクなエピソードが無く、人に話すことでその思い出を成仏させているようにも思えた。
 3時間の恋愛話の後、事前に持ってくるように伝えておいた「捨てようと思えば捨てられるし要らないのに中々捨てられないもの」を持ってきてもらった。誰かから貰ったもの、高価なもの、記念グッズ、元々趣味にしていたもの、目がついているものは捨てずらい。ぬいぐるみ、プリクラ、化粧品、手紙、お守り等色んなものが集まった。これらは今回のテキストを私「たち」のものにするための手段として使っていきたいと考えている。
 それともう1つ、私は元々舞台に自分の「捨てようと思えば捨てられるし要らないのに中々捨てられないもの」をのせて、その「物」の最後の晴れ舞台にして捨てるのが好きだ。それもまた何かを成仏させるための行為なのかもしれない。
 その後今回のテキストの説明をした。様々な読み方が出来るようなものできるようにかなり計算して構成したつもりだ。その過程も含めて説明をした。これも「私達」の物語にするためのプロセスだ。
 その後、皆同じ場所でこのレポートを執筆している、今。そういえば 1月の稽古の時に雑談をして手を叩いたら最初からそこまでの雑談を再現するということをし、それが終わったらまた再現の再現をするということをした。どんどん内容が変わっていく様子が面白かった。まだ他の人のレポートを見ていないので分からないが、辻褄の合わなさがあってもどっちも事実であるということは確かだ。



植木あすか 出演

 前回の稽古から一か月半以上が経過した。制作を担当している新城家に集まり、久々の再会に喜んだ。はじめは、会っていない間に起こった個人的な出来事や恋愛話に花を咲かせた。主宰の濱吉は昨日良いことがあったようで、非常に機嫌がよかった。彼は稽古の時若干怖いので気分がルンルンで来てくれるのはとてもありがたい。昼食を済ませてから、個々の「捨てるに捨てられないもの」の話になった。主宰からは事前にお知らせがあったので、私も自身の捨てられないものを持って行った。私のそれらの多くは、もう使うことはないが人からもらったという物だった。主宰はこれらを劇の中で使い、その後はおそらく廃棄になるだろうということを言っていたが、私の持ってきたものの中には廃棄になるのも少し気が引けるものもあるので、もう少し吟味してみようと思う。私以外のメンバーの持ってきたもので最も印象に残ったものは、押川の日芸入学試験のエントリーシートだった。この人は日芸に入るべきして入ったのだと確信するほど奇抜だった。そういえば実は紙魚のメンバーの中で一番尖っているのは押川だったと思いだした。押川は見た目はとても穏やかそうで、実際性格もとてもゆったりとしているタイプだと思う。だが、時折見せる彼女の奇行は日芸生らしい尖りまくった精神が根っこにあることを感じさせる。そんな性格なので、緊迫した場面でもふと隙間を見つけてじわじわとくる面白さを作れる稀有な存在だと思う。彼女がいるだけでその場の空気が柔らかくなるので、私は押川がいてくれるととても助かる。今も私が必死に原稿を書いている中、早々に終わらせた彼女はわけの分からない鼻歌を歌っている。まっさらな赤ちゃんを見ている気分になる。マイペースが過ぎると思われる彼女だが、その場が困窮したときには独特な視点から物事を見る鋭さが発揮され、頼もしくも思える。今日は稽古らしい稽古というものはあまり無かったように思うが、私のツボを押しまくる押川をはじめ、皆との稽古が明日からどうなるかとても楽しみである。



押川あやの 出演

 稽古が始まる前、12月の下旬の頃からオンラインツールを用いてオリンピック憲章についてディスカッションを行なっていました。憲章を読み進め、話をしていく中で、雑談にたどり着いているということも度々ありましたが、コミュニケーションを通して身体や意識の反応について考えるトレーニングになっていました。対面の稽古に入って殻も、紙魚の稽古では雑談の時間が設けられることがよくあります。対面の稽古が始まってから体力づくりを行なっていましたが、その初日に取り入れたT Pというトレーニングで受けた衝撃はずっと忘れないとおもいます。T Pも含め、動作を可能な限りゆっくりとして立ち上がったり歩いたりするトレーニング、走り、歩き、椅子取りゲーム。前回公演の時もそうですが、紙魚でいう 動く というのは決して舐めてはいけないことだったと、その時気づ“”かされました。主催は体力のない私が疲れているところを見て疲れているのが似合うと言いますが、体力のない人間の気持ちはわからないのでしょうか。困ったもんです。そして本日、本格的な稽古が始まり久しぶりにメンバーと再会しました。恋愛話に花を咲かせていましたが、結局は誰も成立していない、それでも楽しんでいるその空気感を久しぶりに感じてこんな感じだったこんな感じだったと思いました。



新城晴海 制作

 前回の1月24日の稽古から1ヶ月以上空いて、久しぶりに行われた紙魚の稽古は、離れていた時間を感じさせないカンパニー内の会話のテンポ感と空気感に一安心したところから始まりました。見本市さんのインタビュー内で、主宰が、「創作活動を行う上で誰と創りたいか、誰にどういうことをやってもらいたいかということが生まれ始めている。」と話していたように、今回、"雑談" や"コミュニケーション"を大切にしている紙魚の稽古場ではメンバー内の交流が活発で、その交流がプライベートだけでなく作品作りの場でも活発に行われています。そのいい空気感が、そのまま作品に上手く生かすことができればいいなと思います。
 1月の時点では身体の訓練という、キャストがワークショップを通してひたすら身体を動かし、疲労を抱えた先にある表現を主宰が模索している段階だっため、台本についてイメージのすり合わせを行う現段階までこれたことで、ようやく作品の完成が見えてきた気がしました。
 2月はそれぞれの場所で活動を行っていたメンバーが、別々の場所で得た経験や成長を持って見本市という舞台でより良いものへ発展させれるよう、これから密な稽古とコミュニケーションを行っていきたいです。


稽古中の様子






◎作品情報◎

紙魚「劇的なるものをめぐってまごつく二人」

~あらすじ~
「劇的」を見失った2022年に生きる二人はただただ、どこへ行けばよいかどうすればよいかわからずうろうろする。

~構成・演出~
濱吉清太朗

~出演者~
植木あすか
押川彩乃

~参加チーム・タイムテーブル~
Aチーム
2022年4月
 7日(木)15:00
 9日(土)19:00
10日(日)12:00※
※終演後にアフタートーク有(約20分予定)

受付は開演の30分前。開場は20分前。
上演時間は約100分予定(1団体につき約30分の上演)。

◎以上◎

次回は明日、海ねこ症候群からの寄稿です。次回もまたお会いしましょう!

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